セミの脱皮を手伝ってはいけない

今回もかつて連載していたコラムを紹介させていただきます。
このコラムは拙著「プロ講師が使っている朝礼・スピーチの『つかみ』話材」を大幅に加筆して書下ろし寄稿です。

今回は「セミの脱皮に関わる僕の苦い思い出」です。

 PDF版

65号『道経塾』「生きものがたり」

 原稿版

セミの脱皮と野鳥の卵の話

アブラゼミは、幼虫時代の六年ほどを土の中で過ごします。地上に出てきて脱皮するのは有名ですが、土の中でも四回の脱皮を繰り返しているそうです。

また、セミは短命のイメージですが、六年以上生きるのは昆虫の中では長生きの部類に入ります。しかし、地上に出て羽化してからは、ご存知のとおりわずか二~三週間しか生きれません。

私は幼少時代にセミの幼虫を捕まえ、自宅のカーテンに止まらせ羽化を観察したことがあります。夜になると幼虫はカーテンにつかまり羽化していきました。その姿は実に美しく、真っ白なセミが幼虫の背を破って出てきました。動きはとてもゆっくりで、時折動きが止まります。幼い私は助けてやろうと殻をそっと広げてみました。
しかし、その感触は予想外に柔らかく、なんとなく良くないことをしたと感じた私は、その場を離れて布団にもぐり込んで寝てしまいました。

翌朝、セミは脱皮を終わっていたものの、羽がくっついて飛べない状態でわが家の畳の上を這っていました。明らかに、脱皮のタイミングで私が触れたからでした。セミにとって羽化は、六年も地下で過ごし、最後の残り少ない命を使い、飛び立つための大切なプロセスであったのに、とても悪いことをしたと落ち込みました。

 時は経ち、私も部下を持つようになったときに、ふとこの出来事を思い出すことがありました。それは、部下が新しい仕事への挑戦中にうまくいかずに悩んでいたときのことです。その仕事は経験を積んだ者にとってはさほど難しい案件ではなかったので、私は本人に意思を確認せず簡単な処理方法を教えました。しかし、その案件は誰もが試行錯誤して乗り越え成長の糧にしている仕事でした。後に、その大切なプロセスを簡単にスルーさせてしまったことを後悔することになったのです。その時に先の幼少時代のセミの体験を思い出し、人間も成長するプロセスで、遠回りをしなくてはいけないときもあることに気づきました。苦戦している部下を見れば近道を教えてやりたくなりますが、それが後に本人のためにならないこともあるのです。

また、手を差し伸べる必要がある際に重要なのがタイミングです、野鳥の卵がかえるとき、ひな鳥が卵の中からコツコツとつつき、親鳥が卵の外からコツコツつつくというプロセスがあります。この合図が絶妙のタイミングで一致したときにヒナ鳥は生まれるそうです。タイミングがズレるとヒナ鳥は危険にさらされます。早すぎてもダメで、遅くてもダメ、その一瞬まさに同時でなくてはならないのです。

アドバイスは部下が試行錯誤して、あと一歩のタイミングでのわずかなヒントのほうが効果も高く、信頼も得られます。親鳥が殻をすべて割るとヒナが危険にさらされるように、すべてを教えようとすることは部下にとってマイナスになるのです。自分自身の殻を破ろうとしているときの学びこそ最大の成長機会であり、その機会を見極めて最小のヒントを与えることが指導者の役割ではないでしょうか。

 セミは長い地下での生活を経て最後に地上で最大の革新をします。野鳥の卵も外敵から狙われるなか生き残り誕生していきます。人間も多くの経験や危機を乗り越えながら自ら気づき成長していきます。上に立つ者は相手の最高のタイミングを見計らって指導しなくてはいけないのです。

私は幼少時代の〝セミへの大きなお世話〟と〝野鳥の誕生〟からそう思えてなりません。

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