すべての事業には存在意義があります。
その事業を通じて社会に何らかの好影響を与えているはずです。講師ビジネスも直接的には受講者、主催者に対して、間接的には顧客を通じて社会に貢献することになります。
それら「得たい将来像をビジョン」「そのために果たすべき役割をミッション」として言語化しましょう。

自らの存在意義を言語化する

このような講師希望者、現役講師にお勧めの記事です。

ビジョン?売り上げ目標のことですか…
ミッション?そんなの講師で活躍するのに必要ですか…
講師業を通じて社会に好影響を与えたいが、どう表現すればいいの…
講師業の判断基準が曖昧なので自分なりの憲法を持ちたい…
自分の利益だけではモチベーションが続かない…

「ミッション」「ビジョン」を創る目的と期待する成果

目的

講師としての信条、行動原則ができる

期待する成果

  • 迷った時の判断基準となる
  • 自らの存在価値を感じる
  • もう一歩頑張れる動機付けができる
  • 共感者から応援される

「ミッション」「ビジョン」を考えるにあたり

「ミッション」と「ビジョン」定義

「ミッション」「ビジョン」は多様な言葉で表現されていますが、私は下記が一番端的でしっくりきます。

ミッション(使命)は「わが社が社会で実現したいこと」を言い表したもの

ビジョンは「わが社のミッションが実現した時の状態」を言い表したもの

ドラッカー5つの質問  山下 淳一郎 (著)

世界的に有名な「ミッション」と「ビジョン」

バングラディシュのグラミン銀行は、貧困層を対象にした低金利の無担保融資を主に農村部で行っています。そのミッションが…

貧困のない、誰もが活きは活きと生きられる社会へ

「グラミン日本」サイトより引用

そして「貧困を博物館へ~貧困というものを見られる場所は、唯一博物館だけとなる」というビジョンを掲げています。

その結果といってはなんですが、貧困層の自立を支援した功績により、ユヌス博士とグラミン銀行は2006年にノーベル平和賞を受賞されました。

ドラッカーの言葉

前職の講演研修企画会社では、2002年よりドラッカーより直接指導を受けたコンサルタントの指導の下「ドラッカーマネジメント」を研究してきました。
それでも理解できないことは多々ありますが「ミッション」に関しては、すべての軸としてきましたので腹に落ちています。なかでも最も印象に残っている言葉は…

『何をもって憶えられたいかね』

ピーター・ドラッカー『非営利組織の経営』より引用

私が十三歳のとき、宗教の先生である牧師さんが『何をもって憶えられたいかね』と聞いた。誰も答えられなかった。すると、『答えられると思って聞いたわけではない。でも五十になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ』といった。

長い年月がたって、私たちは六十年ぶりの同窓会を開いた。ほとんどが健在だった。あまりに久しぶりのことだったため、はじめのうちは会話もぎこちなかった。するとひとりが、『フリーグラー牧師の質問のことを憶えているか』といった。みな憶えていた。この質問のおかげで人生が変わったといった。・・・・

今日でも私は、いつもこの問い『何をもって憶えられたいか』を自らに問いかけている。これは、自己刷新を促す問いである。自分自身を若干違う人間として、しかし、なりうる人間として見るよう仕向けてくれる問いである。運のよい人は、フリーグラー牧師のような導き手に、若いころそう問いかけられ、一生を通じて自らに問いかけて続けていくことになる。

ピーター・ドラッカー『非営利組織の経営』より引用

「バリュー」を定める

ドラッカーは「ミッション」「ビジョン」にさらに「バリュー」の重要性を唱えています。
「バリュー」とは価値基準です。

一般的に価値基準とは、組織としてミッション、ビジョンを実現するために社員が持つべき共通の行動規範のことを言っております。

ただ、講師はひとりビジネスがほとんどなので、組織としての基準というより自分自身の行動規範、判断基準と考えればいいでしょう。

以前にクレーム対応を専門とする講師に、某業種のクレーム研修を依頼した際に「スケジュールは空いているけどお断りしてください」と言われたことがあります。その講師曰く「あの業界はクレームが来て当然の仕事をしています。つまりクレーマーではなく正当な主張をしているお客様なのです。ですから研修でどのように対処すればいいかなんて指導はできません」とのことでした。

至極もっともで私自身もその依頼を辞退しました。
これこそ講師にとっての行動規範だと思います。仕事が少なく厳しい時期もありますが、事前に決めた判断基準に沿って迷わず即断ることが結果的に自分の仕事に誇りが持てるでしょう。

反対に何としても引き受けで貢献すべき基準もあるはずです。
講師も「バリュー(価値基準)」を定めることは重要です。

講師としての「ミッション」と「ビジョン」まとめ

立派な「ミッション」や「ビジョン」を掲げても言行一致がなければ信頼を失います。講師としてまずは目の前の受講者、主催者に貢献することが最優先です。そして顧客を通じて社会に貢献することも立派なミッションです。

個人的な夢実現も大切

ここまで顧客や社会に対してのビジョンの話になりましたが、やはり自身の未来像も必要です。個人として叶えたいビジョンとミッションとの両輪がそろうことでまっすぐに加速できると考えます。それが自らを突き動かす強い動機になり、結果、ミッション実現の近道になるでしょう。

講師としてのミッションは自ら創る憲法になる
ミッションは壮大に描き、ビジョンは実現している映像を描写する
価値基準に合わない仕事は受けない
目の前の顧客への貢献なくしてミッションを語れない
個人的な願望との両輪があってこそ頑張れる