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ワーキングケアラーはリトマス試験紙

カフェで聞こえてくるとなりの会話に、親の介護だとわかる話が珍しくなくなってきました。みなさんの職場にも、介護と仕事を両立する人がいらっしゃるのではないでしょうか。仕事とプライベートの両立は誰もが直面する時代です。介護に限らず、子育て、勉強、療養、看護、副業など、誰かのケアだけでなく、一人ひとり抱えている事情があります。では、うまくいっている人はどうやって両立しているのでしょうか。そして、両立している職場とはどのような職場でしょうか。

「急なんですが、午後から休みます」

 こんなふうに言われたら、あなたの職場ではどう対応していますか。新人社員ならそれほど困らないかもしれませんが、管理職や中核にいるスタッフなら業務がストップしてしまい、混乱してしまいますね。その瞬間の職場の空気や、「休みます」への回答によって、その後の生産性に影響します。

 あなたの職場で、もし「休みます」の言葉がでたら、どんなふうに対応しているか、つぎの4つのパターンを参考に、ちょっと考えてみてください。

「いいよ。大丈夫。心配ないよ」と笑顔。しかし

 気遣いがあり、「私も介護してるのよ」とサポーティブな声かけがあって居心地がいい職場。ふだんから社員同士で会話があるので和気あいあい。ほっと一息ついたものの、ふと見れば、たまっていた仕事はそのままで、会議資料も手付かず。決裁も滞っているのに誰も見向きもせず。急に休んでしまったぶん、休日出勤や持ち帰り残業で挽回しないと、と思うと、この先がおもいやられる始末。誰も責任を負わない職場なんだとあらためてわかった。

「あ、はい。りょーかいでーす」と知らんぷり

 昼からの会議資料がまだなのでと引き継ぎしようとしても「私、知りません。担当じゃないんで」と冷たく断られ、来週締切の数字入力業務も「今手一杯です」と即、断られ、取引先との打ち合わせ日程調整も「私よくわかってませんし」と目を合わせず断られ、誰も手伝わない、関わらない、冷たい雰囲気。給湯室から「余計なことはしたくないよね」という声が漏れ聞こえて複雑な気分。

「えー、困るんですけど」と怒りモード

 「午後から急に休むなんてありえない」「家族の介護なんて誰かに頼めばいいのに」「こんなにたびたび休むくらいなら、ちょっと考えてほしいよね」「この人の数字、代わりに誰がやればいいの」「どうにかしてほしいな。みんなこんなにギリギリまで頑張ってるのに」「怒られるのは私なのに」という文句のオンパレード。仕事の手を止めないで冷たい目線が、怖い。あぁ、この職場にはいられないと、思わず遠くを見つめてしまった。

「えー、困るんですけど」と笑顔モード

 「困るわ、ほんと困る」という率直な戸惑い。仕事はこんなにたくさんあるし、急ぎの業務もある。次々湧いてくるタスクに休んでいる時間なんてないということは、お互いわかっているからこその言葉。「けど、なんとかしたいでしょうから」と、ひとまず休み中の仕事を引き継ぎ。一息ついたら「今後、他の人もこういう事情があったときのために業務見直しをしたいので、みんなでアイデア出ししないか」と提案されました。優先順位をつけて不要な仕事はやめて、DX導入の機会にもなって、スタッフ全員の生産性が向上しました。言いたいこと言い合えるってこういうことかと実感。

ワーキングケアラーは生産性を向上させる

 介護や子育てなど、家庭の事情で仕事との両立を担う社員の存在は、生産性の低下を危惧されがちです。もちろん、急な休みや、一定期間の休暇は、業務の進捗に影響します。欠員がでると残っている人の業務が増えていくとともに、負担感からくるストレスがメンタルヘルスにも悪い影響を及ぼします。

 しかし、こうしたことがきっかけとなって、業務改善やあらたな仕組みの導入につながることもあります。人員が増えたからといって生産性が上がるとは限らないのは、管理職の方々ならご存知でしょう。

 VUCAの時代、正解が見えないこの先に、いまひとつ効率の上がらない仕事のしかた、延ばし延ばしにしてきた職場の課題をそのままでいいとは思えません。ワーキングケアラーの「休みます」をきっかけに、成長する組織にしませんか。

 ワーキングケアラーは、あなたの職場が、学習して成長する組織かどうか確認できる、いわばリトマス試験紙。単に、個人的な事情を抱えた人として個別の対応に取り組む人事担当部署だけのことと捉えず、組織風土のリニューアルの機会として組織全体として取り組む必要があります。心理的安全性の低い職場を成長する職場にするために、ワーキングケアラーの学びを活かしてください。

ワーキングケアラー講演~企業に期待される新たな役割 丸山法子<人財開発クリエーター>
【プロ講師ドットコム】今後加速する人材不足に対して、「両立ができないため退職する人を見送る」のではなく、「両立するために全社的に支えていく」視点を手に入れて、人財に選ばれる企業になる道筋をご提案するものです。
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