お問い合わせはこちらをClick

ワーキングケアラーを組織で支援

なぜ、介護が経営リスクになるのか

突然の話で驚かれたかもしれませんね。しかし、経営とは程遠いところにあると思っていた介護が原因で、経営が行き詰まるという危機が増えています。深刻で根深い悩みとしてある日突然「降ってくる」のです。まずはご自身のこと、社員のこと、会社のことを思いながら読んでみてください。

こんにちは、人財開発クリエーター丸山法子です。

30年近く、社会福祉業界で生活相談の対応と福祉事業の企画運営、そして介護現場、医療現場のリーダー層を対象にマネジメント教育、人財確保育成のコンサルティングを提供してきました。介護未経験者を、あっという間に一人前に育てあげ、最前線に出すための指導法を伝える日々です。

昨今、サービス現場では利用者である高齢者よりも、家族とのトラブルが急増していることがわかり、「いったいなにが起きているのか」と調べていると、どうやら介護と仕事を両立する「ワーキングケアラー」の存在がみえてきたのです。

仕事を休む理由、実は家族の介護が増えている

有給休暇の完全消化や残業削減など、働き方改革が進んでいます。「こんなに休んでいいのか」「休み時間はやることがない」「ひますぎてお金使うだけだ」という声もあります。

ワークライフバランスは、仕事の生産性をあげるためにも、休養、リフレッシュ、家族との団欒、自己研鑽というニュアンスになりがちですが、その影で、有休をこまめに使いながら介護をこなしている人がいます。

仕事の合間にできる程度であればいいのですが、介護が必要な家族は、ひとりとは限りません。自分の両親+配偶者の両親(これで4人)、配偶者、そして自分自身の介護。合計6人です(たまに、兄弟姉妹が加わることもあります)。

介護期間というのをご存知でしょうか。平均寿命から健康寿命を差し引いた期間、という計算ですが、10年前後あるとみておいてください。ひとりずつずれてやってくるなら長期間になり、一度にやってくるなら短期間だがかなりの負担増になり、仕事への影響が変わってきます。

さらに、家族も昭和の大家族のかたちから構成人数が減少したうえ、それぞれ働いたり学校へ行ったりなど担い手不足となり、現在では子どもたちが介護を日常的に行うということも問題視されています。男性女性に限らず、家族の介護負担はおもいっきり増えているのが現状です。それなのに、職場では表に出さず、家族のことは家族のなかで、そうしたデリケートな話はひっそりと行われているのです。

介護は急にくる・終わりが見えない

「親ですか。確かに歳をとって、なんとなく不安だが、とりあえず元気でいてくれるし」そう思っていたある日、病院から「入院しました。今すぐきてください」という電話があり、驚いて飛んで帰ったという、まさにドラマのシーンから介護はスタートします。

その時は、とりあえず仕事の道筋をつけたものの、それから「急にちょっとだけ休む」という日々が続くとともに、仕事の進捗の遅れ、調整や管理の難しさ、できるのにできないという困惑、周りからの不信感などを感じます。

転倒して骨折した、病気が悪化したなどで入院しますが、ご存知のとおり最近は、入院期間が短くなっています。いったんリハビリ施設に入所し、自宅に戻るなど方向が決まれば、そこから家族の介護が本格的に始まります。退院に向けて入所施設の確保や主治医との話し合いは必須。それだけでなく、実家の親の受診の付き添い、運転免許証を返納させた親の買い物送迎や、ショートステイの送り迎えなどに半日費やす人もいます。介護保険サービスを利用するときはケアマネジャーとの連絡は頻繁にあり、主治医にあわせて開催されるサービス担当者会議などは平日日中に行われるため、こちらの都合は基本的に通用しません。「明日の午後から2時間休みます」ということが頻繁に起きてくるわけです。

だから、いつ休むのか、どれだけ休むのか、終わりが見えないうえ、責任ある立場であれば代わりがきかないことも。まさに仕事との両立が難しいのが介護。「休む」と職場に伝えるも、やることはたくさんあって休めない忙しさ。ここに負担やストレスが重なり、限界を迎えて退職を選択する、というのがいわゆる「介護離職」です。

長いケアを担うのは管理職から経営層

今まで介護は女性の役目とみなされてきました。親の介護が始まったとしても、パート勤務や専業主婦の妻や娘、息子の嫁が担ってきました。しかし、今や女性もシニアも労働者として期待されています。子育てや家事だけに限らず、男性も女性も協力しあって家族を守る時代が、本格的に到来したことを受け入れなければなりません。

そして、ぜひ知っておいてほしいのが「2025年問題」です。介護が始まるのが75歳前後。後期高齢者前後からが急増するのですが、団塊の世代が後期高齢者になるのが2025年。介護の担い手である団塊ジュニア世代の40代から50代は、企業で経営責任のある立場、部署の大黒柱となってなくてはならない大切な存在です。

もう、おわかりいただけましたか。多くの会社の中心的な立場を任せている部長、課長が「すみません。急なんですが、今日と明日、有休をとらせてもらいます」と言われたり、「ごめんね、このプロジェクトはみんなで進めておいてもらえるかな。進捗はオンラインかチャットで確認するけれど、私には期待しないでほしい」と言われたり。大切な家族の終わりの見えない介護を担おうとすると、職場に、業務に、経営に、どれほどの影響があるでしょうか。

ためいきの出るような話ですよね。これが「ワーキングケアラー」問題です。社員の個人的な問題は個人のはんちゅうで解決をしてもらって職場には持ち込まないように・・・と会社が突き放すような冷たい対応をしたり、職場の人間関係がギスギスしていたりすると、貴重な人財であっても退職を選択するしか道はありません。そうならないように、気づいたときから会社にできるサポートに取り組みましょう。なにから始めれば良いのかを一緒に考えるために、まずは現実を見て知って考え、語り合うことから始めませんか。

仕事と家族を両立させるチームをつくる道標をつくろう

今なにが起きていてこれからどうなっていくのか。

会社と社員を守るためにどんな対策が必要なのか。

2025年をみすえたワークライフバランスを考えませんか

タイトルとURLをコピーしました