ロールモデルインタビュー 第七回

”いかに紹介してもらうか”
紹介してもらうためには自分が信頼されるのが第一

 株式会社Smart Presen 代表取締役 新名 史典さん
     日本で唯一の技術企業向けプレゼン研修講師

ーどのような企画で講演研修をされているのですか?
主なお客様は「製造業」「インフラ企業」「金融機関」「自治体」の4つです。平日は企業や自治体の研修や金融機関や商工会議所などの公開講座などが多く、週末は労働組合のセミナーや国が力を入れている「創業支援」の育成プログラムで「メンタリング」「プレゼンテーション指導」から審査員まで務めたりしています。
一時期はオンライン7割のときもありましたが、現状はオンラインとリアル半々くらいです。(2021年6月時点)

先に走っている先輩に信頼を得てチャンスをもらうことが重要且つ確実な方法

ー講師で独立するために大切なことと新名さんがどのようにされたか教えてください。
ひとことでいえば”いかに紹介してもらうか”です。紹介してもらうためには自分が信頼されるのが第一なので、まずは研修をしているところを見てもらうことが必要です。私の場合ある講師養成スクールに通ったときに講師で来ていた凄い先輩に見てもらう機会があり、そこで信頼を得て仕事を紹介してもらえるようになりました。その先輩の紹介がなかったら今の私はないくらいお世話になりました。私も独立して丸10年になり仕事を紹介してほしいと頼まれますが、まずは見ないと紹介できないですね。ただ私が見て「この人凄いな」「私が持ってないところを持っているな」と思えば自信もって紹介します。
先に走っている先輩に信頼を得てチャンスをもらうことが、仕事をいただくために一番重要且つ確実な方法だと思います。

ー新名さんは最初の仕事はどのように取られたのですか?
独立してゼロでスタートしたくなかったので、古巣の会社を退職する時に部門別の研修に提案をして依頼をもらうことができました。これでスタート時点で最初の仕事を確保することができました。
また独立前に商工会議所から依頼をもらうための講師オーディションに参加して講師派遣会社の方に見てもらっていたので、独立後は地方の商工会議所の仕事も入りだしました。さらに講師仲間と自主開催セミナーなども企画するなどデビュー前に見ておいてもらう努力は惜しみませんでした。実際、退職の1年以上前から本業に支障のない範囲で助走をつけていました。人脈はすぐにできないので独立するなら早い段階から作っておかなくてはいけません。

うまくいっている講師は営業しています。「営業」と呼んでいないだけです。

ーその後、依頼が増えていくときにターニングポイントはありましたか?
一番大きな転機になったのが、2年目に入るときにと某外資系企業で1500名の営業マンの研修企画のコンペに10人位のプロジェクトを組んで参加しました。企画は通ったもののアンケート結果が悪いとどんどん落とされていくような厳しいものでした。そこで落ちないように頑張ったことで「なんとかこの世界でやっていけそうだ」自信がつきました。ただ翌年度も入る予定で4.5月はすべて開けておくように言われていたのですが、外資系企業の恐ろしいところで直前になって企画が飛んでしまいました。そこで焦って必死で営業しました。3年目なのでそれなりに人脈があったからなんとかなりましたが、あれが1年目だったら廃業していました。その時の危機感で講師としての営業力があがりました。

ーよく先生業は営業してはいけないと言われますが、どのように営業されたんですか?
講師も営業力いりますよ。ただし営業しようと思わなくていいんです。自分のコンテンツのアドバイスを求めに行くのです。先方がアドバイスをしているうちに「その研修いいな」となったりするのです。特にエージェントはたくさんの講師を抱えて時代の趨勢を見ているので「こういうネタどうですか?」とアドバイスを求めます。すると営業の方もアドバイスしているうちに紹介先が浮かんだりします。
実際、うまくいっている講師は営業しています。ただ「営業」と呼んでいないだけです。

ひとつの案件を3案件にすることを目標にしています。

ー依頼が続く講師になるために必要なことを教えてください。
講師業はリピート命ですので、まずはいただいたひとつの案件を3案件にすることを目標にしています。研修の合間に事務局の方と雑談しながらさりげなく「このようなネタも引き合いあるんですよ」と売り込むのではなく話をします。すると「その件も企画書出して」と言っていただけたりします。もちろん顧客に貢献したい気持ちがあるからです。

ー最後にこれから講師デビューを目指す方にアドバイスをお願いします。
なんとか独立して10年生きてこれた要因を突き詰めて考えると最後は「どれだけお客様に喜んでいただけるか」「お客様のためになるのか」に尽きると思います。
最初のころにちょっと自分はやれると勘違いしてしまって、準備不十分で臨み悪い評価を受けたことがあります。その時はすごい落ち込みました。あの時のくやしさを忘れないで、とにかく毎日毎日を一所懸命にやること、その日のお客様を大事にすることの積み重ねしかないと思っています。
この仕事はその日の受講者とは一期一会ですから、その日の時間を120%でやることの積み重ねしかない。結局それが信頼につながります。

株式会社Smart Presen 代表取締役 新名 史典

学生時代に徹底的に鍛えられたプレゼン力が認められ、新入社員時から提案プレゼンスタッフとして全国を行脚。大手コンビニエンスストアの食品安全を保証する取り組みでは、外資系世界企業との厳しい競合の中、18案件のプレゼンコンペで17勝1敗と圧勝。
入社4年目で新規事業の営業統括部長に指名される。そこでは、ほとんどの部下が年上という異常な環境を経験。試行錯誤の結果、「相手の状況をしっかりと理解し、共感を得ることから入らないと受け入れられない」という結論に至る。そして「一旦その関係を築くことができれば非常に強固な絆が生まれ、困難な環境でも人は動いてくれる」ということを身をもって知る。それらを実践した結果、3年で年商24億円の部署に育てることに成功。同時に、上司を効果的に動かす「部下力」を確立。「部下が上司を理解できないのは、上司のおかれた環境を部下が意外なほど知らないからである」ということに気づく。これまでほとんど語られることのなかった上司の苦悩を示すことで、若手ビジネスパーソンの役に立つとの確信に至る。今までの経験をノウハウとして体系化し、2009年より自主開催を含めたビジネスプレゼンテーション、コミュニケーションのセミナー講師としても活動開始。特に、お笑い放送作家集団とのコラボセミナーは、コミュニケーションにお笑いの要素を取り入れたユニークかつ実践的なセミナーとして好評を博し、新聞に取材されるなど話題を呼んだ。
そのノウハウは医療関連や研究機関など、技術系職種からも注目され、講演依頼は増え続けている。
2011年10月独立起業。日本で唯一のプレゼンを専門としたコンサルティング企業である株式会社SmartPresenを設立し、代表取締役に就任。これまでの専門分野(食品衛生、感染予防)にも関わり、学会発表やセミナー講師を実践しながら、そのノウハウ提供を行うことを最大の強みとしている。また、商品開発のプロセス構築の経験は、商品開発コンサルタントとしての貢献にも役立っている。

取材後記

講師として独立するにあたり戦略的に助走をつけていたことに感心しました。この行動力は会社員が独立講師になるための指針となるでしょう。また講師の営業方法としてアドバイスを受けるという手段は秀逸です。先生業は営業してはいけないと決めつけずにうまくコンタクトを取ることの重要性が学べました。(インタビュアー/文:安宅 仁)