人的資本経営の視点での人事、労組の研修

人材を「コスト」でなく「資本」と捉える
企業の人事施策:昭和・平成の「能力開発」から令和の「人的資本経営」へ
日本企業が直面する少子高齢化、グローバル競争の激化、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は、企業経営の根幹を変え、人事施策にも大きな変革を迫っています。
要素 | 昭和・平成の能力開発 | 令和の人的資本経営 |
目的 | 企業が必要とするスキルを効率的に習得させる | 企業と個人の持続的成長、市場価値の向上 |
視点 | 労働力を「コスト」として捉え、短期的な投資対効果を重視 | 人材を「資本」として捉え、中長期的な価値最大化を追求 |
主体 | 会社がカリキュラムを決定し、社員は受動的に受講 | 従業員一人ひとりの能動性(キャリア自律)が不可欠 |
研修内容 | 階層別研修、業務知識の詰め込み 過去の自慢話のような講演も多数実施されていた | スキルの再定義(リスキリング)、自律的キャリア設計 |
この「コスト」視点の能力開発は、社員に「やらされ感」を与え、知識が現場で活用されないという課題を抱えていました。
令和の人事施策:投資と戦略的開示への転換
現代の「人的資本経営」では、企業は人材を「未来の成長のための投資」と見なします。
企業は、財務情報だけでなく、従業員エンゲージメント、リスキリング投資額、男女間賃金格差といった非財務情報(人的資本)の開示が求められるようになりました。人事の役割は、単なる研修の運営から、経営戦略と連動した戦略的な人材ポートフォリオの設計へと変貌しています。
企業が「キャリア自律」を声高に叫ぶ一方で、従業員側には「会社都合」に見えることへの疑念や、自身の将来に対する不安が残ります。ここに、労働組合が担うべき役割が生まれます。
労働組合の活動:福利厚生から「人的資本」の価値向上パートナーへ
企業の人事施策が戦略的投資へと変わる中、労働組合のセミナーや活動も、昭和・平成の「福利厚生・レクリエーション」の枠を超え、組合員という人的資本の価値向上に直接貢献する役割を担うべきです。
昭和・平成の労組セミナー:福祉と受け身の支援
これまでの労働組合のセミナーは、主に以下のような位置づけでした。
- テーマ: 文化講演会、親睦イベント、一般的なライフプラン・マネープラン。
- 目的: 組合員へのサービス提供と、エンゲージメント向上
- 課題: 企業の人事施策との連動性が低く、組合員の本質的なキャリア不安の解消に至らない。
令和で組合に期待される重要な役割:人材育成と組織開発
人的資本経営の時代、労働組合は企業側の人材投資をチェックする「モニタリング機能」と、組合員自身のキャリア自律を支援する「育成・支援機能」という、極めて重要な役割を担います。
役割 | 組合活動の方向性 | 研修・セミナーテーマ例 |
人材育成 | 組合員のキャリア自律と市場価値向上の支援 | マネープラン、リスキリング(DX基礎)、セカンドキャリア設計、交渉力 |
組織開発 | 心理的安全性の高い職場づくりと、エンゲージメントの向上 | コミュニケーション、対話力・傾聴力研修、ハラスメント防止、メンタルヘルス、ワークライフバランス |
モニタリング | 企業の人材投資の公平性・妥当性をチェック | 企業財務・戦略分析、経営スキルの習得(P/L、B/Sの読み方) |
人的資本経営は、人事部門、労働組合が連携することで成果が高まるのではないでしょうか…
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