社会情勢の変化と労働組合の役割

執行委員・職場委員に求められること

前川敏幸　<まえかわとしゆき>　
元 NEC兵庫労組副委員長　社会保険労務士､行政書士

元労働組合役員として豊富な経験を持つ社会保険労務士。労働法令や労使関係などのテーマをわかりやすい表現でエネルギッシュに語る。特に労使関係に関しては中立的な考えを基本に、企業や労働組合のあるべき姿を提起する。
モットーは｢元気で明るい職場づくり｣｢魅力あふれる人づくり｣

社会、労働環境が大きく変化する時代において、労働組合はいかに存在価値を発揮するべきか… 目の前に見える事象だけを考えるのではなく、社会、経済の動向を俯瞰し、労働組合のあるべき状態を長期的な視点でとらえる。

23歳でNEC兵庫労働組合の執行委員に就任以来、組合員の若手リーダーとして活躍。新しい感覚の組合員研修、機関紙発行、レクリエーション等を企画し実行に繋げてきた。その後、三役の一角として書記長、副委員長を歴任。書記長時代には、バブル経済崩壊からIT不況と重なり、会社売却、一時帰休、賃金カット、早期退職募集等再三にわたるリストラ提案に対し、常に労使交渉の先頭に立ち難局を乗り切る。

１６年にわたる労組役員の経験と特定社会保険労務士としての専門知識を活かし労働紛争予防、人事労務管理、リーダーシップなどについて労使双方を俯瞰してわかりやすく話せる数少ない専門家として、労働組合の執行委員、職場リーダーの研修などで労働組合の役割と活動の意義を伝えている。

労働組合・従業員組合・UNIONの未来～執行部に期待する役割～

変化する時代に労働組合はどのような価値を提供するのか

社会状況の中で企業はどうあるべきか？労働組合はどうあるべきか？
目の前に見える事象だけを考えるのではなく、広く社会の動きを知り、高いところから「俯瞰（ふかん）」し、長期的な視点で物事を考え、労使で危機感を共有し、立場を超えて対応を協議していくことが不可欠ではないでしょうか。

労働組合の役割

もし労働組合がなければ

・公平公正に昇給額、賞与額が決定されますか？
・不当な扱いを受けた場合、誰かが助けてくれますか？
・職場環境は、改善されますか？（安全衛生委員会で自由に発言できますか？）
・労働時間の短縮は、進みますか？
・合意なく労働条件を引き下げられませんか？
・ワンマンで理不尽な上司に対抗できますか？
・特別休暇や休職制度はありますか？
・会社の方針や業績などは周知されますか？
・困ったときに相談する人はいますか？
・パワハラを訴えても対処してくれないとき、どうしますか？　　　等々

これからの労使関係

・労使は同じ船に乗って航海している
・現状、課題、危機感の共通認識
・中身のある本質的かつ健全な議論
・小さなことに拘らず大局を見る（「俯瞰」する）

労使協議会のあり方

・協議会の目的を明確にする
・本質的な議論を行い、儀式やパフォーマンスの場にしない
・経営側の立場も理解する
・言い難いことをあえて言う
・目先と将来の両方を議題にあげる

これからの労働組合に求められること

・労働条件の向上、職場環境の改善
・組合員からの相談、苦情対応、調整役
・企業のコンプライアンスチェック
・65 歳定年、再雇用 70 歳に向けた組合員の意識改革（意欲・気力・体力）
・人材育成（コミュニケーション能力、リーダーシップ）

団体交渉、労使協議会、事務折衝に臨むにあたって

・使用者（＝経営者）と労働組合の立場の違いを知る
・役員や管理職の「心の内」を想像し、味方につける
・言葉は丁寧に、中身は妥協せずはっきりと
・執行部自身の考えと組合員の代弁者としての発言を区別
・相手を最後まで追い込まない（相手の逃げ道を用意する）
・あえて労働組合から「マイナス」の提案をしてもよい
・執行部の意見を統一しておく
・一人で交渉するときは独断で回答しない
・判断に迷った時は、一度時間をおいて考える
・執行部が妥結したら、今度は組合員を説得する役割へ