労働組合があってほんとうによかった!

労働組合って何をしてくれるの…
「毎月、給与から引かれる組合費。ストライキなんてやるわけないし、いったい何に使われているんだろう?」
電機メーカーで働くAさんは、給与明細を見てそう感じることがある。ユニオンショップなので組合への加入は義務。脱退という選択肢がないだけに、漠然とした不満が心の中にくすぶっていました。
Aさんと同じように感じている組合員は、決して少なくないかもしれません。
社会人になり、気がつけば労働組合がある環境が当たり前。その恩恵を意識することもなく、ただ毎月引かれる組合費だけが気になる。まるで空気のように、その存在意義が見えにくくなっているのかもしれません。
しかし、ちょっと立ち止まって考えてみてください。もし、あなたの会社に労働組合がなかったら…?
労働組合「がある」と「ない」~働く環境、歴然とした差~
労働組合の存在は、働く私たちの環境に、想像以上に大きな影響を与えています。まるで、見えない防護壁のように、私たちを守ってくれているのです。組合がある企業と、組合がない中小企業を比較してみましょう。
労働組合がある企業 | 労働組合がない企業 | |
賃金・賞与 | 組合が会社と交渉し、相場や業績に応じた適正な水準を確保。定期的なベースアップも期待できる。 | 経営者の判断に左右されやすい。景気変動や業績悪化で一方的に減額されるリスクも。 |
労働時間・休日 | 法定基準に加え、組合が働き方の改善を要求。残業時間の抑制、有給休暇の取得促進などが図られる。 | 人手不足や経営者の意向で長時間労働が常態化しやすい。有給休暇も取得しにくい雰囲気がある場合も。 |
ハラスメント対策 | 組合が窓口となり、相談体制を整備。会社への改善要求や再発防止策の徹底を求める。 | 相談できる相手がおらず、泣き寝入りするケースも。会社主導の対策も形骸化しやすい。 |
雇用安定 | 組合が経営状況を監視し、安易な人員削減に歯止めをかける。整理解雇を行う場合も、組合との協議が必須。 | 経営判断で人員削減が強行される可能性も。雇用保険などのセーフティネットだけが頼り。 |
安全衛生 | 組合が定期的な安全点検や改善提案を実施。労働災害の防止に向けた活動が活発。 | 安全管理体制が不十分な場合も。労働災害が発生しても、適切な対応がされない可能性も。 |
福利厚生 | 組合が会社と交渉し、住宅手当、家族手当、育児休業制度などの充実を求める。 | 福利厚生制度が整っていない場合や、制度があっても利用しにくい雰囲気がある場合も。 |
意見反映 | 組合を通じて、現場の意見や要望を会社に伝えることができる。改善提案制度なども整備されやすい。 | 経営層に意見を伝える機会が少ない。不満があっても、声を上げにくい雰囲気がある場合も。 |
紛争解決 | 個人では会社と対等に交渉しにくい問題も、組合が間に入り、解決に向けたサポートを受けられる。 | 会社との紛争が生じた場合、個人で対応せざるを得ない。精神的な負担も大きい。 |
いかがでしょうか。こうして比較してみると、労働組合があることが、私たちの働く環境にいかにたくさんの「安心」をもたらしてくれているかが明確にです。それは、まるで空気のように普段は意識しないけれど、なくなると息苦しくなる、そんな存在なのです。
若手社員こそ「組合役員」「職場リーダー」で未来を切り開こう
「え、マジすか?俺が職場リーダー?」
20代後半から30代前半の、まさにこれからキャリアを築き上げていく若手社員にとって、職場リーダーや労働組合の役員への打診は、時に戸惑いとプレッシャーを感じさせるかもしれません。「面倒くさそう」「自分の仕事で手一杯なのに…」そんなネガティブな感情が頭をよぎるのも無理はありません。
しかし、ちょっと待ってください。その一歩を踏み出すことは、決してあなたのキャリアの足かせになるものではありません。むしろ、想像もしない成長の機会、未来の自分への先行投資となる可能性を秘めているのです。
なぜ若手こそ「面倒な役回り」に飛び込むべきなのか?
現代はVUCA時代【Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)】といわれ、目まぐるしく変転する予測困難な状況です。そんな時代を生き抜くためには、指示待ち人間ではなく、自ら考え、行動し、周囲を巻き込むリーダーシップが不可欠です。リーダーシップは管理職だけでなく働く人全員に求められるスキルとマインドです。そのリーダーシップを磨く絶好のトレーニングの場こそ、「組合役員」や「職場リーダー」なのです。
どのような価値があるのでしょうか…
成長にレバレッジがかかる
日々の業務ではなかなか経験できない、多岐にわたる「課題解決」の実践的スキルを積むことができます。
- 多様な価値観との衝突と協調
年齢、立場、考え方の異なる組合員や職場の仲間と目標を共有し、協力して物事を進める過程で、コミュニケーション能力、交渉力、そして何よりも「人を動かす力」が飛躍的に向上します。 - 組織運営の 疑似体験
組合運営や職場改善活動を通じて、計画立案、実行、評価、改善といった、 組織活動でPDCAをまわすスキルを 実践的に習得できます。これは、将来管理職で様々な困難に立ち向かうときの自信となるでしょう。 - プレッシャーを乗り越えるレジリエンス力
職場リーダーとして先輩、同僚、後輩に執行部の意向を伝える経験を通じてプレゼンテーション、コミュニケーション力が磨かれます。それらのプレッシャーを乗り越えることで、どんな困難にも折れない心を高められます。
管理職を目指す疑似体験ができる
職場リーダーの経験は、将来あなたが管理職になった際に、それを経験していない管理職に対して 圧倒的なアドバンテージとなります。
- 現場感覚の醸成
組合員や職場の仲間の生の声に耳を傾け、現場の課題を肌で理解する経験は、机上の空論ではない、実践的な現場視点を養います。 - リーダーシップの試行錯誤
小さなチームを率いる経験は、自分のリーダーシップスタイルを確立するための実験の場となります。成功体験はもちろん、失敗から学ぶことも多く、将来のリーダーとしての マネジメントスキルを高めることが出来ます。 - 部分最適と全体最適の視点
執行部での活動は、経営層の視点や会社の全体像を理解する機会となります。部門間の連携の重要性や、組織全体の目標達成に向けた自分の役割を俯瞰することで、全体最適に物事を考えられるようになります。
組合役員は学びの宝庫
労働組合の活動は、経験していない同僚には得られないフェーズの学びが実感できる。
- 机上の空論でない交渉術
会社との団体交渉を間近で見たり、実際に参加したりすることで、経営視点と高度な交渉スキルを学ぶことができます。これは書籍やセミナーで得られない貴重な学びになります。 - 労働関連法規の知識
組合活動を通じて、労働基準法や労働組合法といった、働く上で不可欠な法律知識を、座学だけでなく実践を通して習得できます。 - 部門間の障壁の発見
通常の業務では接点のない他部門の仲間との出会い、情報交換によってセクショナリズムを打破しボトルネックを見つけること全体最適ができます。
労働組合役員の経験は計り知れない自己成長となる
「若いうちに苦労は買ってでもしろ」という言葉がありますが、組合役員や職場リーダーの経験は、まさに自ら「成長の機会」を掴みに行く行為と言えるでしょう。それは、目先の「面倒くさい」を乗り越えた先に、計り知れない「自己成長」と「キャリアアップ」が待っているでしょう。
今、目の前にそのチャンスが訪れたなら、躊躇する必要はありません。飛び込んでみてください。そこで得られる経験は、必ずあなたの未来を力強く切り拓くための、かけがえのない財産となるはずです。