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そうは言ってもやっぱりExcel #3

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組織のシステム、個人のExcel

こんにちは。IT活用推進アドバイザーの家門理恵です。

前回まではMicrosoft Excel(マイクロソフト エクセル)を学ぶ価値と、Excelの学びやすさについてお話してきました。

▼「そうは言ってもやっぱりExcel」シリーズ

#1:このご時世でもExcelを学ぶ理由

#2:圧倒的なシェアゆえに、学びの選択肢が豊富なExcel

せっかく身に着けたExcelのスキル。マクロ(VBA)も使って自動化機能を持つ「すごいExcel」を作って、チームや同僚にも活用してもらって・・・といきたいところですよね?そのお気持ちはよ~く分かります。でもちょっと待ってください。あなたが作ったExcelが、高度で便利なものであればあるほど、社内の汎用ツールのように使い始めてしまうことは、組織にとってのリスクに繋がってしまうのです。

Excelを組織内の汎用ツールとして使用することのリスク

一般社員が作成したExcelを部門や組織全体で複数の社員向けのツールとして使い始めることのリスクは、大きく分けて2つあります。

1. 情報漏洩のリスク

どんなにファイルやシートやセルを保護しても、基本的にExcelでは比較的簡単に多くのデータのコピーができてしまいます。暗号化やパスワード設定をせずに、メールでExcelファイルを添付してやりとりする、なんてのはもっての他。SharePointに置いて共有したとしても、うっかりダウンロード制限をかけ忘れたり、アクセス権限を大人数のユーザーグループに付与していたりすると、いつ、誰がダウンロードして、それがどのように使われたのかを把握することは、ほぼ不可能となります。

これ対して、CRM(顧客関係の管理システム)やERP(社内の業務プロセスに関するシステム)など、定評のある専門業者のシステムを導入すれば、データに対する権限をユーザー単位が管理できて、アクセスログも監視できることが抑止力となり、情報漏洩のリスクをを大きく下げることができます。それでももちろん情報漏洩を100%防ぐことはできませんが、自社の社員が手作りしたExcelファイルを使うのとは、リスクレベルに雲泥の差があります。

専用システムの導入には当然それなりのお金と時間と労力がかかりますが、このご時世、企業としての信用を守るための必要コストと言えるのかもしれません。

2. 属人化のリスク

もう一つのリスクが、メンテナンスの問題です。

一般社員が作成したExcelツールは、仕様書がなく、きちんとした動作テストも、運用保守の体制の検討も行われていないものがほとんどでしょう。もしもそのExcelツールを作った社員が退職し、何か不具合が起きてしまったら、後任の担当者はそのファイルの「解読」から始めなければなりません。そもそも解読できるスキルのある人が後任になるとも限らず、最悪の場合、業務が滞ってお客様にもご迷惑がかかるような事態になるかもしれません。

Excelはどういった範囲や用途で活用すべきか?

それでは、結局のところ「みんな大好き?!Excel」は、どんなふうに組織の中で使っていけば良いのでしょうか?

1. 最少人数&期間限定で

まず、利用範囲と期間に関しては、個人もしくは最少単位のチーム内での、限定期間の使用に留めるのが良いと私は思います。納期や終了時期が決まっている少人数でのプロジェクトで使用するのであれば、ExcelファイルもSharePointやOneDrive上に置くことで、社内外の関係者との共同編集が安全かつ簡単にできますから、むしろ積極的に活用すべきでしょう。

2. データの前処理に

また、新しくシステムを導入する際、旧システムからデータをまとめて抽出(エクスポート)して、新システムに登録(インポート)する際には往々にして、下記のようなデータの前処理が必要です。Excelはこうしたデータの前処理には、依然として最も手軽で高機能なツールです。

  • クレンジング:重複するデータや空白行の削除
  • 型の変換:日付、文字列、数値などのフォーマットの修正
  • 統合や分割:異なる表(データテーブル)の結合や分割
  • 構成の変更:ヒト用になっている集計表をデータベースの形に組み替える(※)など

▼ 組み換えとは?
往々にして現場に使用されている多くの「表」は、ヒトの目に分かりやすいレイアウトになっており、そのままでは、システムにインポートしたり、ピボットなどでの分析ができません。従って、そうしたヒト用の表はデータベースの形に組み替える必要があります。

データの前処理の例

※なお、この変換(列のピボット解除)については、Power Query、または無料のアドイン(例:Tableau Excel Reshape)などを使用すると便利です。

3. 小~中規模のデータ分析や発表資料の作成に

データ分析やグラフによる可視化は、会社やプロジェクトの規模によっては、専門の部署のデータアナリストが、TableauなどのBIでデータの分析とレポートの作成を行い、各レイヤーの社員に必要な情報が、行動指針ともに上から落ちてくるだけ、ということもあるでしょう。企業によっては個人情報保護やセールス&マーケティング施策の統制の観点から、個々の社員(例:営業担当者)が、独自にExcelでデータを作ったり分析したりすることを禁止しているケースもあります。

しかし、個人や少人数のプロジェクトでちょっとした資料(売上や市場シェアの推移、アンケート結果、ガントチャートなど)を作って分析したり、発表したりという場面では、やはりExcelほど手軽で強力なツールはありません。個人情報や機密情報の取り扱いについてしっかりと社員を教育しつつ、Excelの使用を許可することは、社員に主体的、積極的に業務に取り組んでもらい、組織の生産性を上げていく上で重要であると言えそうです。

結論:組織のシステム、個人のExcel

以上のことから、社内で恒常的に部署を超えて多くの社員が利用する見込みがあるツールやプロセスについては、一般社員のお手製のExcelを使うのではなく、専門業者のシステムの導入を検討すべきでしょう。きちんとした仕様書があり、保守契約があり、維持や改善にかかるコストが明確なシステムであれば、情報漏洩やトラブル対応が遅延するリスクも低く、結果的として、より良い費用対効果が期待できます。

また、業界でシェアの高いシステムであれば、全世界の他の会社の要望や事例が反映された、自動的なシステム改善の恩恵も受けられます。自社のプロセスと合わない部分は、カスタムメイドで改良してもらうこともできるかもしれませんが、逆に本当にそのプロセスが最も効率の良いやり方になっているか、自社のオペレーションを見直すきっかけになるかもしれません。

と同時に、Excelの使用が許されているということは、個々の社員が会社に信頼され、エンパワーメントされているという証なのかもしれません。CRM、ERP、BIツールといった現代の潮流に乗りつつ、Excelもバランス良く活用し、組織としての効率性と生産性アップに繋げていきたいものです。

次回予告

3回に渡ってお届けしてきた「そうは言ってもやっぱりExcel」シリーズはいかがでしたでしょうか?みなさんにとって、Excelの学び方や使い方を考えるきっかけとなったのでしたら幸いです。

次回は新シリーズ「OneNoteでストック情報管理」と題して、Microsoft 365製品群の1つである高機能メモ帳 OneNoteについてお話しします。

See you next!

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