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夏に多い?ワーキングケアラーデビュー

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今年の夏は、ちょうどお盆に台風直撃のニュースが。せっかく久しぶりに帰省しようと思っていたのに、交通機関の運休が心配で、帰るのやめようとか、秋にずらそうとか、そういう相談をされた人も少なくないはずです。楽しみにしていた子どもたちや、家族に会えると待ち構えているふるさとの家族もいたはず。ほんと、残念ですね。なにがって、夏こそ歳を重ねた親の生活の隅から隅まで確認できるチャンスですから。ご存知でしたか?夏に「ワーキングケアラー」が始まる人が多いんですよ。年老いた親の生活、どうみればよいのでしょうか?

目次

親の「ここ」を確認しよう 3つのポイント

 長旅をへてやっと帰ってきた実家。待ちかねていた親は、精一杯のおもてなしをと満面の笑顔。孫の成長を喜び、久しぶりのにぎやかな数日ですね。楽しい時間ですが、その合間につぎの3つについて確認をしながら、安心な暮らしを整えていただきたいと思います。

1 ADL(日常生活動作)

 立つ、座る、歩く、持つ、といった、基本的な体の使い方です。料理をしたり、散歩したり、買い物に出たり、運転したり、そういう行動に同行して、なんだか難しそう、できないことがありそう、という点にアンテナを立ててみて。通常40歳くらいから体力の低下が顕著に始まるもの。あれ?昨日の疲れがとれないな、とか、体が痛いけれどもしかしておとといの筋トレの筋肉痛?、など、身に覚えがあるでしょう。高齢者になると、腰や膝など痛いところがあるのはあたりまえ。そして、腕があがらない、首がまわらないなど動きの悪い(可動域の制限)部分があるのも当たり前です。老化に伴うとはいえ、それが生活のしづらさの原因になっているとなると気がかりです。

2 生活習慣

 食生活、運動習慣、睡眠、学び、他者とのコミュニケーション、お金の使い方など。例えば、清潔な暮らしをするために掃除をしたり洗濯をしますが、からだが弱ってくるとおっくうになってしまい、今までちょっと頑張ればできていたことでも、こう暑いと、もういいか・・・などと諦めたりもします。すると、ゴミが溜まったり、同じ衣類をずっと着ていたり、顔を洗わず、風呂にも入らず、この暑い季節はとくに、においがしたりします。

 また、毎日出かけているか、定期的に受診しているか、お薬はなにが処方されていてきちんと飲めているか、冷蔵庫のなかは古いものがいつまでも残っていないか、同じものがあまりにたくさん入っていないかなど、家の中に入らないとわからないようなことにすこしだけ点検してもらい、自分で考えて適切に暮らすことができているかどうかを見てほしいのです。

3 考え方、思考ぐせ

 生活習慣に似ているのですが、ちょっと違う。思考の傾向は見ただけではわからないので、会話が必要です。しかも、ここだけの話という本音。高齢になると話題の範囲はぐっとせまくなり、隣りの家の誰々、コンビニの人、宅配の人など、活動半径が身近に。そんな人たちの日々のちょっとした行動や言動に、どう思ったかとか、どう考えたかとか。また、テレビのワイドショーでこんなことを言っていたがこう思うとか、これは違うとか、こう言っていたけれどほんと?とか。よく聞くと、その考え、古いよねとか、今はそれじゃダメだよって訂正したりすること、あります。たとえばIT機器の使用は「歳だからダメよ」と敬遠しがちですが、使ってみると便利だとわかります。Zoomでおしゃべりする90歳も珍しくなくなりました。安否確認のサービスや便利な買い物サービス、インターネットが使えるようになると暮らしの負担はいくぶん軽くすることができます。そこへの拒否感を払拭したり、健康な暮らしに必要な情報も選ぶこともできるでしょう。また、高齢者を狙う悪質な電話もあいかわらず増えているし、そういう話をすると「大丈夫大丈夫〜わたしはひっかからないから」って笑ったりしていても、そういう自信のある人に限って詐欺にあったりしますし、もしかするとすでにもう、被害にあっていたかもしれません。つまり、考え方や知識がアップデートされているかを確認してほしいのです。


 まずはこの3点を観察してみてください。多少の気がかりはしかたないけれど、どうしても家族からみた親は、いつまでも元気でしっかりした親でいてほしいという期待があるぶん、大丈夫って思ってしまいます。こういういくつかの気がかりから、介護生活のきっかけにつながります。できるだけ早めに手を打っておくことと、今後、あなた自身が介護を担う時のために、今しかできない準備にも役に立ちます。

「それでも気になるなぁ」と思ったら

1 率直に親に相談する

最近体調がすぐれない、受診しようと思ってもなかなか行く機会がない、自家用車を何度か続けてぶつけた、大したことのない物忘れだが認知症が怖くて不安、夜中眠れない、食事をつくるのが面倒だ、こんなに暑いのに暑くないらしい・・・など、帰省中に聞いたなら、対策を一緒に考える相談をしてみましょう。「いいよいいよ、私たちのことは大丈夫だから。子どもたちには迷惑かけたくないから」とたいていの親は言います。「そう?じゃあ…」って終わらせず、確実に対策をとるようにしてください。そのままにしておくと、今度の帰省までなにもしないまま…、気がかりの先送りになります。

2 地域包括支援センターに相談する

そうはいっても親自身がなにか行動するとは思えないくらい、心配なときは、迷わず地域包括支援センターを頼ってください。「認知症かもしれないけれど病院には絶対行かないと言い張っている」「最近の暑さのなか、節約だといってエアコンもつけずにいる」といったささいな相談からでも対応してくれます。町や地域ごとに担当センターが決まっているので検索を。「自治体名」+「地域包括支援センター」で調べればでてきます。実家の住所地を担当するセンターをさがして電話を。お盆休みはありませんが、窓口受付時間は決まっています。そのときに、できるだけ午前中に連絡を。その日の午後からすぐに動いてくれる可能性がありますので、早いに越したことはありません。また、帰省最終日に電話される人もいますが、ヒアリングの機会がなく必要な情報が確認できないことが多く、結局手間がかかります。ですので、帰省から戻る直前ではなく余裕を持って連絡をしてください。

3 次回の帰省までの間の連絡を確認する

地域包括支援センター任せや、本人任せにしてしまわず、その結果どうなったのか、家族としてできることは何かなど、確認をしたいところ。次の帰省はいつか、それまでの連絡は電話なのか、LINEなのか、毎週か、毎日か、誰が連絡するのかなど、これは業務と同様、進捗確認をして、必要な手立てを打つ必要があります。じつは、高齢者支援の落とし穴として、専門機関が関与しはじめると安心とともに不安がよぎり、つい「もういいです。大丈夫です」と途中でシャットアウトすることが少なくありません。

ここでは「介護」の話をさせていただきましたが、暮らしには介護以外にたくさんのケアが求められています。これは厚生労働省の資料です。家族には、ひきこもり、ヤングケアラー、ひとり親など、制度では対応しきれないそれぞれの家庭にある気がかりがあります。そういうことを親に任せっきり、という人もいるかもしれません。ぜひ一度、あらためて話あってみてほしいのです。

 家族との会話はお互い、わかっているはず・わかってくれているはず、という暗黙の期待があります。そこにボタンの掛け違いが始まるのです。これがこじれると、日々の業務に影響がでてまいります。「明日帰ってきて」という連絡がはいると、職場で「すみません、急なんですが、明日、有休とらせてください」ということになるのです。仕事も同じ。考えられる問題は先に回避しておくことで、生産性が高まり、仕事の質も向上するわけです。

 お盆の帰省にあわせて、実家の親の現実に直面したことで、仕事と介護の両立生活が始まるというワーキングケアラーが増えています。まずは一人ひとりが、そして職場でスムーズに仕事が継続できるよう、なにをするべきかを考え、すぐに整えていくことをおすすめします。まずは、職場で勉強会をしませんか。私がお手伝いいたします。

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