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ワーキングケアラー対策のはじめどき

なぜ「うちには関係ない」と言いきれるのか?

組織や会社の成長には2つの視点があります。こうなりたい・これを得たいという「ビジョン」と、これは避けたい・こうなっては困るという「リスク管理」。たとえば「固定費をおさえながら売上を倍増したい」「悪い口コミで顧客を逃さない」「経営効率を考慮しつつ全国展開を」といった感じです。

また、もうひとつの視点があります。それは、今すぐ!という「短期的視点」、今はいいけれど先の見通しをという「中長期的視点」です。たとえば、コロナ感染対策やビジネスチャンスとしての補助金申請は「今すぐ」のミッションですし、DXやインボイス導入、SDGsや人口減少社会への対応などは5年10年先をみすえたミッションです。

先の見えない現代社会に成長する企業なら、どの視点を意識すればよいか、おわかりでしょう。「ワーキングケアラー」は、中長期視点でありながらも今すでに始まっている取り組みです。しかし、こんなお声をよく聞くことも多いです。「うちの会社はどうかな」と、想像してみてください。

うちの社員で介護している人はまだいない

介護休暇制度の取得申請がない、介護が理由で退職したという話を聞かない、課長部長から介護があって業務に問題があるなどといった話は聞かないと言います。ほんとうにそうでしょうか。じつは、介護をしている人の調査で、50代後半男性の88%が女性は40代の68%が仕事をしており、全体に両立する人は増え、さらに年々40代の人が増えています(「平成29年就業構造基本調査」より)。誰にも言っていない「かくれ介護者」はいらっしゃいませんか。介護休暇制度は周知されているか、退職時にじっくり面談をしているのかどうか、上司と部下の信頼やコミュニケーションはとれているのかどうかを考えると、仕事と介護を両立している社員の存在が表面化していないだけかもしれません。「そんな人はいない」と言われている会社に、自分からは言えないという社員の声もあります。

 総務省統計局平成29年就業構造基本調査より

うちの社員、みんな若いから

「若い」とは何歳くらいのことでしょうか。たとえば20代、30代の社員ばかりだと、親や祖父母の介護をしているワーキングケアラーは確かに少ないでしょう。親の介護が始まるのは40代50代がほとんどですから。

 しかし、介護への関心は少ないけれど、会社のサポートや姿勢について、関心はたいへん高いです。なぜなら、出産・育児という若い世代ならではの気がかりがあるから。介護も子育ても「大切な家族のケア」という基本は同じ。この会社は私たち社員の家族を応援してくれるのかどうか、じっと観察しています。

うちの社員はみんな男性ばかりなので

「男性ばかりだから介護は関係ない」という心の声が聞こえてきますが、どうでしょうか。じつは、働きながら介護をするのは女性より男性のほうが多いという上記の調査結果がありました。急に始まった親の介護を、夫婦どちらが担うのかとなったとき、あなたならどうしますか。今までであれば、収入の低い傾向にある女性が仕事を辞めざるを得ない状況がありましたが、男性も女性も社会の一員として仕事をする今、男性ばかりの組織にありがちな「家庭のことは女性が」という昭和な感覚は、残念ながら時代錯誤といわれますし、介護が必要な家族を複数かかえるという世帯も少なくありません。

まずは、社員に説明できるように

 どうでしたか。まだ、介護中社員の情報は把握されていないのかもしれませんね。しかし、水面化では家族の介護が始まっていて、じつは仕事との両立に苦労している人がいて、その苦労を上司がどうサポートするのか、まわりがじっと見ています。これがやがて組織風土となり、働きやすい会社かどうか、見極められます。そして、「ここなら大丈夫!」と思えば、辞めないだけでなく、優秀な人財に成長するので生産性もあがり、さらに人が集まってくる会社になれるチャンスでもあります。

 「ワーキングケアラー」対策に、今すぐに取り組んでくださいとまではいいません。まずは、気づく・気づかせることから始めてみませんか。そのために、ワーキングケアラーや組織風土についての勉強会をして、うちは関係ないという前提を変えていきましょう。「ワーキングケアラーとはなにか」を社員に説明できる上司になっていただくことがゴールです。

ワーキングケアラー講演~企業に期待される新たな役割 丸山法子<人財開発クリエーター>
【プロ講師ドットコム】今後加速する人材不足に対して、「両立ができないため退職する人を見送る」のではなく、「両立するために全社的に支えていく」視点を手に入れて、人財に選ばれる企業になる道筋をご提案するものです。
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