「安全衛生大会」を成功させるために
歴史と近年の動向を踏まえて、講師派遣会社として想うこと
労働者を災害から守ることで現場の生産性を高める
毎年立夏に開催される「安全衛生大会」は、日本の産業の発展とともに歩んできた歴史ある取り組みです。この期間は、企業が労働災害防止への意識を高め、安全な職場環境づくりに力を入れる重要な機会となっています。
本稿では、「安全衛生大会」の歴史と近年の動向を振り返りつつ、安全衛生について考えてみました。
安全衛生週間の歴史と意義
「安全衛生週間」は、昭和3年に初めて実施されて以来、90年以上の歴史を誇ります。この間、日本の産業構造は大きく変化し、労働災害の形態も多様化してきました。しかし、「人命尊重」という基本理念の下、労働災害防止に向けた取り組みは、一貫して行われてきました。
厚生労働省が発表した令和5年の労働災害に関するデータによると、死亡災害は減少傾向にあるものの、休業4日以上の死傷災害は増加傾向にあります。特に、転倒や腰痛といった労働者の作業行動に起因する災害が増加している点が課題として挙げられます。
令和6年度の安全衛生週間のスローガンと目指すもの
令和6年度の安全衛生週間のスローガンは、「危険に気付くあなたの目 そして摘み取る危険の芽 みんなで築く職場の安全」でした。このスローガンが示すように、労働災害防止には、一人ひとりの意識改革が不可欠です。
そのように考えると、安全衛生大会でおこなわれる安全講話はオマケではなく役割を担っているといえます。
- 危険を認識する目: 周囲の危険に気づき、潜在的なリスクを把握すること
- 危険を取り除く行動: 危険を放置せず、改善策を講じること
- 全員参加: 企業全体で安全意識を高め、安全な職場づくりに取り組むこと
このような視点は内部ではさんざん伝えていると存じますが、さらに外部の有識者からのメッセージによって行動変容に繋がると考えます。
当方などに言われるまでもなく、これらの目標を達成するために、各企業は、安全教育の充実、安全点検の徹底、危険源の改善など、様々な取り組みを進めていることでしょう。
そのなかで「安全講話」は「安全衛生大会」のプログラムのひとつとして定着しております。
しかし、最後にプログラムするケースが多いため、講話はオマケといった見方をする傾向にあります。
事務局の皆様にとっては外部講話が始まれば役割の7割は終わったという感じですが、せっかくの機会ですので、意義あるものにしていきましょう。
前半の安全部長の講和と後半の外部講師の講演が重複…
当方も長年、「安全衛生大会」の講師紹介をしてきましたが、講師は常に安全の専門家の講演が適切というわけではありませんでした。多くの「安全衛生大会で」講演は最後にプログラムされています。いくら素晴らしい講演でも半日参加してからでは集中力が低下しています。場合によっては順番を変えることも検討してください。
また専門家の講演を入れた場合は、できるだけ前段の内部の安全講話はコンパクトにする方がいいでしょう。実際、当方も会場で受講したとき、前段の安全部長の話とかなり重複しているケースがありました。人は同じ話を連続で聞かされるとウンザリしてしまいます。
さらに言えば、重複よりも問題なのが安全部長の講和を否定する内容になっていることもありました。講師は自分の出番に合わせて会場入りするため、安全部長の講和を聞いていなかったのです。とても残念な結果になったのはご想像の通りです。
やっぱりコミュニケーションと安全は親和性が高い
多くの「安全衛生大会」では『コミュニケーション』をテーマに用いています。
やはり人間がおこなう作業では意思疎通の齟齬が起因とな事故は無くなりません。少しでも人為的な災害を減らすためにコミュニケーションは有用なテーマです。この枠には場慣れしたユニークな講師が揃っています。
その他、以下のような課題も安全大会の講和に適しています。
腰痛が安全にもたらすリスク
腰痛は、建設現場で最も一般的な健康問題の一つです。慢性的な腰痛は、作業効率の低下だけでなく、安全面にも大きな影響を与えます。例えば、腰痛を抱えている作業者は、重物を持ち上げる際の姿勢が不安定になり、落下事故や腰椎椎間板ヘルニアなどの二次的な怪我のリスクが高まります。また、痛みによる集中力の低下は、周囲への注意を怠り、事故につながる可能性も否定できません。
睡眠不足が事故を誘発
十分な睡眠を取れていない作業者は、集中力や判断力が低下し、ミスを犯しやすくなります。建設現場は、常に危険と隣り合わせであり、ちょっとしたミスが大きな事故に繋がる可能性があります。また、睡眠不足は、疲労感やイライラ感を増大させ、人間関係のトラブルや暴言といった問題を引き起こす可能性も高まります。
肥満・運動不足の問題
肥満や運動不足は、体力低下や生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、安全面にも悪影響を及ぼします。例えば、肥満の作業者は、身体の動きが鈍くなり、急な状況に対応しにくくなります。また、体力不足は、長時間作業による疲労感を増大させ、安全意識の低下につながる可能性があります。
熱中症による二次被害
熱中症は、高温多湿な環境下で作業を行う建設現場において、特に注意が必要な健康リスクです。熱中症になると、意識を失ったり、痙攣を起こしたりするなど、二次的な災害を引き起こす可能性があります。また、熱中症を経験した作業者は、しばらくの間、作業能力が低下し、安全に作業を行うことが難しくなる場合があります。
見過ごせない自然災害
地震、台風、豪雨など、自然災害は、建設現場に大きな被害をもたらす可能性があります。特に、災害時には、避難経路の確保や、災害後の復旧作業など、多くの課題が生じます。事前に、災害発生時の対応マニュアルを作成し、定期的に訓練を行うことで、被害を最小限に抑えることができます。
事故を起こさないための課題はまだまだある
もちろん、これらは「安全衛生大会」の時だけ気をつければいい課題ではないでしょう。
建設現場で労働者の健康を守り、生産性を向上させるためにも必要な支援だと考えます。
- 腰痛対策: 定期的な健康診断、姿勢指導、腰痛予防体操の実施
- 睡眠不足対策: 十分な睡眠時間の確保、昼休み時間の活用
- 肥満・運動不足対策: 社内健康プログラムの導入、健康的な食事の提供
- 熱中症対策: 暑熱環境下での作業時間の短縮、こまめな休憩、水分補給
- 自然災害対策: 避難経路の確保、緊急連絡体制の構築、防災訓練の実施
これらの対策を総合的に実施することで、より安全な建設現場を実現することができます。
まとめ
「安全衛生大会」の講和はオマケと思っている参加者に、「今年の安全衛生大会の講和は役に立ったな」「現場のメンバーにも教えてやろう」と思ってもらえる講演企画をしましょう。
最後に、「安全衛生大会」の実施時期は5~7月に集中します。そのため企画のタイミング次第で人気講師のスケジュールが埋まってしまう傾向にあります。早い安全協力会で前年の秋に外部講話の講師を選定しております。早く企画すればご希望の講師が確保しやすくなりますので、お早目のご検討をお勧めします。
是非、お気軽にお問い合わせ下さい。 ご安全に!