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ワーキングケアラーを考える 職場と家族のあたらしいかたち

 働くこととプライベートな暮らしの両方を大切にしようという「ワークライフバランス」。すこしずつ浸透してきましたが、その難しさも同時に見えてきました。企業として働きやすい職場を作る視点から、プライベートな暮らしを象徴する「家族」のこれからを考えてみませんか。

サザエさんちの未来。大丈夫?

 日曜日の夕方に見るテレビ番組の定番といえば「サザエさん」。昭和44年から続くほのぼのとした家族の風景にほっこりさせられます。サザエさん24歳、波平さん54歳、フネさん50ン歳、マスオさん28歳など、現代から想像すると驚くような年齢設定ですが、当時はそれが当たり前。老い方の価値観の変化を思い知らされますね。

 よく考えるとこうした3世代家族、いまではとても珍しいレアケースとなりました。どちらかというと、お盆やお正月、法要で集まる実家の風景かもしれません。統計では単身世帯が28.8%、夫婦のみ二人暮らしが32.3%と世帯全体の半分を占めています。そして、親と子の二人暮らしが20.0%です。ほぼ、1人よくて2人といった暮らしぶりが主流です。

 農業が主な産業だった明治や大正時代には平均8人とも言われていましたが、現在は一人暮らし生活へまっしぐらです。サザエさん一家の未来は大丈夫?と心配してしまいますが、家族のお手本として、いつまでも放映し続けてもらいたいと願っています。

このごろの家族のかたち

 今後も一人暮らしか、よくてご夫婦か親子二人暮らしが大半という暮らしになります。家族といえば、猫や犬などペットが家族という人も増えていて、コロナ禍を背景に、犬・猫推計飼育頭数全国合計は、1,605万2千頭といわれています(「2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査」より)。じつは、1年間で新たに飼われた犬や猫の頭数は1年間で生まれた子どもの数をはるかに超えるようで、すっかり家族の一員となっているのがわかります。

家族の機能とは

 家族には、5つの機能があるといわれています。もしよかったら、あなたのご家族のこと、思い浮かべながら読んでみてください。

1 情緒機能       お互いつながっているな〜と実感できる「安全基地」

2 社会化と社会布置機能          子どもをしつけ、社会の一員とする

3 生殖機能       子どもを産み育てて成長させる

4 経済機能       収入を得て、食べるもの・教育・ほしいものなど消費生活をつくる

5 ヘルスケア機能          看病や介護をして健やかな暮らしをおくる

(フリードマン家族看護アセスメン卜モデル)

 いかがですか。一人暮らしや二人暮らしになると、これらを少人数で担わないといけません。元気で困ったことがないならよいのですが、昨今、不安や困りごとが増加して働き続けることが困難な人々の背景のひとつに、家族のかたちがあるともいえますね。

いざというときに頼りにしたいものとは

 家族に期待できない現代、いざというときに頼りにしたいのは何でしょうか。ホームヘルパーや便利屋さん、家政婦など、家族の代わりを果たす民間サービスもたくさんありますが、なかなか使い続けるのも大変です。費用もかかる上、細かいところまでの配慮もそれほど期待できないかもしれません。公的制度やサービスは「申請主義」と言って、該当する自らが申込の手続きのため役所にいく必要があります。こちらも大変ですよね。

 そこで、ちょっと考えてほしいのです。年に1回だけしか会わない遠方の家族もいいですが、勤務先の同僚のほうがいざというとき頼りになるのではないでしょうか。1日8時間勤務なら、1週間に5日間、合計40時間職場で会って、顔を見てあいさつをして、仕事の会話をする間柄のほうが、わかりあえることがあるのではないか、と思うのです。「じつは今、困ってるんだけど」と心打ち明けられる関係性ができてさえいれば、血縁家族とは違う家族のような関わりができるわけです。こうした「職場風土」、あると安心だと思いませんか。

「ワークライフバランス」をスローガンだけでいい時代は、もはやコロナ前で終わりを遂げました。多様な働き方が当たり前になるこれからは、職場が第二の家族になる時代です。人々は、給料や有給、通勤時間で職場を選ぶことから、サポートしてくれる職場かどうか、といった「働きやすさ」も求められるようになります。こうした安全地帯になるような職場風土をつくることが企業にとって、優秀な人材を集めるきっかけにもなります。時間はかかりますが、ゆっくりていねいに職場風土を育てていきませんか。

ワーキングケアラー講演~企業に期待される新たな役割 丸山法子<人財開発クリエーター>
【プロ講師ドットコム】今後加速する人材不足に対して、「両立ができないため退職する人を見送る」のではなく、「両立するために全社的に支えていく」視点を手に入れて、人財に選ばれる企業になる道筋をご提案するものです。

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