お問い合わせはこちらをClick

部下からの「介護が始まった」相談をうけた上司のいい答え方・残念な答え方

 「あの、課長。ちょっとご相談が」なんとなくチラチラ顔色をみていた部下が勢い付けてやってきた。「うん、どうした?」「じつは」とためらいがちに「実家の親が倒れて入院したんですが、来週退院することになって」と続き「しばらく実家に帰って親の面倒をみないといけなくて」と聞かされてフリーズ。こんなことはありませんか。

 つまり「介護のために仕事をときどき休むので、迷惑かけてごめんなさい」と、つまり「急に休みます」「休みをバシバシとります」宣言です。休むの?仕事どうするんだ?代わりはいないのに。おいおい、どうするんだよ?

 しかし、休みの原因が介護となると、正直どう答えていいものかわからない、という上司の戸惑い。こんなこと、ありますよね。

 しっかり働けるのが当たり前だった人にがっつり仕事を任せていたのに、急にいなくなるわけです。仕事が滞ります。見渡すとパート、派遣スタッフ、まだ頼りない中途採用者ばかりだと、自分自身が引き継がないといけないと腹をくくるしかなく、ため息しか出ません。とはいえ、そんなそぶりを見せてはいけないとわかっているあなたは、「そうなんだ、仕事のことは大丈夫。頑張ってしっかり介護してあげてね」と励まし、あまり家庭の事情には踏み込まないよう、それ以上は聞かないようにしました。この対応、ハズレではないけれど、正解ではないのです。なぜでしょうか。

 今日は、部下の「介護が始まった宣言」に、上司はどう対応するべきかについてお伝えします。ポイントは3つ。

1 「仕事は大丈夫。心配しないように」と安易に言わない

 仕事の進捗が不安だろうから安心させてあげないといけない。そう思われたかもしれませんが、ほんとうに大丈夫ですか。代わりのいない職場で「人がいないから仕事は止まっています」とは言えないのが管理職。全て担えばいいという思考はあぶないです。それは部下本人だってわかっているはず。むしろ、いつでも代わりができるようにしておきたいので、進捗状況を細かく教えて欲しい、ときどき相談したいので休みの間の連絡方法も教えておいて欲しいと伝えてください。

 つまり、休みをとることを受け入れたうえで「あなたがいないと困る」「けれど、あなたが安心して休みをとれるよう、仕事をきちんとサポートするから、ここはしっかりと協力してほしい」と率直に伝えることが大切です。この程度の会話で「大丈夫」と言われるくらい、自分の存在はたいしたことなかったのかと思われては、かえってがっかりさせてしまい逆効果です。

2 「しっかり介護してあげてね。頑張って」と決めつけない・励ましすぎない

 介護生活に慣れないうちは、本人が介護をどう受け入ればよいかまだ定まっていません。そんなときに、頑張りすぎてしまったり、ひとりで抱えてしまったりすると、ストレスがたまり、心身ともにバランスを崩してしまいます。じつは「介護は手抜きが大事」と言われるくらい長期戦。ただでさえ頑張らないと、自分がやらないと、と思っている人に対して「しっかり介護を」ではなく「自分のことも大事に」と、「頑張って」ではなく「頑張りすぎないでね」とか「いつでも頼ってね」のほうが嬉しく感じるものです。

3 具体的な見通しだけは聞いておく

 介護だけでなく出産育児、障害、そしてがんなど疾病の治療など、デリケートな事情について、経験のない人にとってはなかなか理解できないことばかり。あたりさわりのないようにしたいという気持ちもわからなくないのですが、脳梗塞なのか、認知症なのかなど、どんな状況で今後どうなる可能性があるのか、など、「答えにくかったら答えなくてもいいんだけど、なにか役に立てるかもしれないから教えて欲しい」とことわりながら、可能な範囲で病状や介護の見通しなど、確認しておいてほしいのです。もし、ご自身でも介護経験があればその体験も伝えていただくと、お互い理解が深まるのではないかと思います。

 介護初心者にありがちなのは、活用できる制度をあとで知って「あのとき使えばよかった」と後悔すること。そうならないために、上司は介護の基本的な情報や知識は確認しておいてほしいのです。基本的なことで大丈夫。具体的には、①介護保険制度の流れ、②使える介護サービスのだいたいの種類、そして大事なのが③社内の福利厚生制度。これらは、上司から教えてもらえるととても安心です。

 仕事の生産性が落ちてしまうのは本人の能力低下ではなく家庭環境に原因がある場合もあります。こうしたワーキングケアラーの生活背景をよりよく知っておくことで、逆に生産性を高めることもできます。

 こうした「あの、ちょっと・・・」の声かけに、上司の最初の対応で、その後の本人の意欲、そして職場の雰囲気までが大きく変わります。家庭の事情を抱えながら働くワーキングケアラーが圧倒的に増加する今、上司は「知らない」では済まされない時代になりました。

上司である管理職のみなさん、福祉の基礎のキだけでよいので、知っておいてほしいと思います。必要なことだけわかりやすくお伝えする「ワーキングケアラー」の勉強会、ぜひ企画してみてください。お手伝いいたします。

ワーキングケアラー講演~企業に期待される新たな役割 丸山法子<人財開発クリエーター>
【プロ講師ドットコム】今後加速する人材不足に対して、「両立ができないため退職する人を見送る」のではなく、「両立するために全社的に支えていく」視点を手に入れて、人財に選ばれる企業になる道筋をご提案するものです。
タイトルとURLをコピーしました